top of page
Academic_640x160_en.png
Business_640x160_en.png

日本EC市場における越境EC活性化の現状と海外メーカーへの示唆

日本のEC市場は国内取引だけでなく、海外消費者が日本の商品をオンラインで購入する「越境EC」も拡大を続けている。経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年度の対日越境EC市場規模は以下の通りである。

  • 中国消費者による購入額:2兆6,372億円(+8.5%)

  • 米国消費者による購入額:3兆1,397億円(+6.0%)

両国合計は約5兆7,769億円となり、日本製品への安定した需要が継続している。



1. 越境EC市場規模と成長の概要

対日越境ECは、中国・米国市場を中心に堅調に拡大しており、日本ブランドに対する品質・安全性・信頼性の評価が成長を支えている。



2. 成長を支える主な背景

2.1 訪日客行動との連動

訪日観光客が日本での体験・購入後に帰国し、越境ECで継続購入するケースが増えている。


2.2 決済・物流基盤の整備

主要な国際決済サービスの対応拡大、国際配送サービスの標準化により、購入から受け取りまでが利用しやすくなっている。


2.3 販売チャネルの多様化

日本発の越境ECモールや、Amazon・楽天等のグローバル販売枠組みが整備され、海外消費者のアクセス手段が広がっている。


2.4 「Made in Japan」ブランドの強み

化粧品・健康食品・家電・ファッションなどで、品質や安全性に対する高い信頼が購買意欲を支えている。


2.5 デジタルマーケティング手法の進展

SNS、インフルエンサー、レビュー、ライブ配信など、オンライン上の情報接点が消費者行動に影響を与えている。



3. 越境ECで存在感の強い主要カテゴリー

公的統計でカテゴリー別市場規模は個別に公表されていないが、越境EC利用が特に多い分野として、以下が一般的に知られている。

  • 化粧品・美容関連:成分情報・口コミが購入判断に大きく影響

  • 健康食品・サプリメント:安全性・原料表示が重要

  • 家電・電子機器:製品保証・アフターサービス体制が差別化要因

  • ファッション:サイズ情報・返品ルールが購入しやすさに直結

  • 加工食品・酒類:保存性・輸出条件に対する対応が求められる



4. 越境ECにおける主な課題

  • 通関手続きや規制対応

  • 返品・返金対応などの顧客サポート

  • 決済リスク管理

  • 物流コスト・配送リードタイムの最適化

これらは参入初期の障壁となりやすいため、外部パートナー活用が有効となる。



5. 海外メーカーが取るべき実践的戦略

戦略領域

具体策

マルチチャネル販売

自社越境サイト + 大手ECモールを併用して顧客接点を拡大

商品情報・表示・言語対応

日本語・英語・中国語など多言語化と成分・保証情報の明確化

デジタルマーケティング

SNS・インフルエンサー・ライブコマースを活用した認知獲得

物流・倉庫ネットワーク

国際配送・地域別拠点・3PLとの連携で配送効率を改善

顧客データ活用

購買履歴を分析しリピート購入促進施策を強化


6. 将来展望

今後、日本の越境EC市場は東南アジアや中東など新興市場の需要増により、多様化が進む可能性が高い。また、商品真正性を示すデジタル認証、AIによる需要予測、AR試着などの先端技術が、国境をまたいだ購買体験の標準化を促進する。

「信頼性ある日本製品 × デジタル・国際物流・顧客理解」この掛け合わせが、海外メーカーにとって越境ECを収益拡大の中核チャネルへと成長させる鍵となる。


コメント


最新記事
アーカイブ

© JASEC 2017 

一般社団法人 日本イーコマース学会

Japan Academic Society for E-Commerce

埼玉県所沢市三ヶ島2-579-15 早稲田大学人間科学学術院 西村昭治研究室

info@jasec.or.jp  04(2947)6717

  • meta-70x70
  • X
  • Youtube
  • JASEC  一般社団法人 日本イーコマース学会:LinkedIn
bottom of page