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日本EC最新事例2025:ナゴミヤ

BtoB-EC導入でFAX受注を完全解消~人員削減と新規顧客層拡大を同時実現したDX戦略~



1. 事業背景と抱えていた経営課題

1.1 業務用和菓子卸としてのナゴミヤの立ち位置

株式会社ナゴミヤは、2009年の創業から約15年間で、業務用和菓子卸の分野において堅実な成長を遂げてきた企業である。

事業の特徴は以下のとおり。

  • 取り扱い商品:全国の和菓子メーカーから仕入れる業務用和菓子

  • 販売先:和菓子店、食品スーパー、飲食店、旅館、ホテル、土産店など幅広い業種

  • 登録顧客数:1,110社(2020年12月時点)

  • 仕入れ先メーカー数:約40社

  • 従業員数:3名(導入前)

創業時は和菓子メーカーと食品スーパーとの単純な卸売が中心だったが、徐々に中小個店や飲食店、宿泊業など異業種にも販路を拡大し、事業規模を広げてきた。


1.2 FAX受注体制における深刻な非効率

EC導入前、ナゴミヤの受注フローは完全にアナログ依存だった。

顧客側の負担

  • メーカーごとに異なる手書き発注書に記入する必要がある

  • FAX送信の手間が大きい

  • 複数メーカーの商品を仕入れる場合、複数書類の準備が必要で煩雑

ナゴミヤ側の負担

  • FAXの読み取りミスが頻発

  • 手入力作業に時間を取られ、担当者の負担が限界に達していた

  • 紙カタログの作成コストも大きな負荷

業務効率の問題点

  • 会員数増加に比例して受注業務の負荷が急増

  • 手入力に追われ、顧客対応の質向上に時間を割けない

  • 「売上が増えるほど業務が破綻する」構造的な限界に直面していた


1.3 新規顧客急増による対応能力の限界

特にコロナ禍を機に状況は急変した。

  • 新規登録数:1日50件 → 70〜100件へ急増

  • 飲食店など従来想定外の新規業種からの問い合わせが増加

  • 人員3名では対応しきれず、成長機会を取りこぼす危機的状況に陥っていた

ナゴミヤは「成長を妨げるのは人員でも市場でもなく、FAX中心の旧体制である」と明確に認識するに至った。



2. Bカート導入の経緯と業務フローの変革

2.1 Bカート採用の理由

ナゴミヤは、BtoB-ECプラットフォーム「Bカート(株式会社Dai提供)」を導入した。採用理由は以下のとおり。

  1. BtoB商習慣へ標準対応

    • 掛け売り、見積書発行、複数配送などBtoB特有の機能を標準搭載

  2. 月額9,800円でスモールスタートが可能

  3. 最短3日で導入できるスピード感

  4. 導入実績800社以上の信頼性

ナゴミヤの業務規模でもリスクなく導入できる点が決定打となった。


2.2 Bカート導入後の新たな受注フロー

導入前(旧体制)

  1. 顧客が手書き発注書に記入

  2. FAX送信

  3. ナゴミヤが手作業で入力

  4. ミスが発生しやすい

  5. 出荷指示

導入後(新体制)

  1. 顧客がBカートで商品を検索・発注

  2. 受注データが自動でシステムに連携

  3. 必要な場合のみ電話で追加確認

  4. 出荷部門へ自動通知

FAX・手入力・読み取りミスが完全に消滅した。


2.3 「メモ欄」機能による顧客理解の深化

Bカートの管理画面には、顧客ごとに共有できる「メモ欄」がある。

  • 顧客の好み・傾向を記録

  • 担当者間の引き継ぎがスムーズに

  • 個別対応の品質が向上

単なる受注システムではなく、顧客情報管理(CRM)ツールとして機能している。



3. 受注業務の効率化と人員削減

3.1 受注担当が「2名 → 1名」に

Bカート導入により、受注業務は半減した。

背景

  • 手作業(FAX→入力)がほぼゼロに

  • 入力ミスが激減

  • 処理時間が数倍短縮

結果、1名で十分に対応可能な体制となった。


3.2 浮いた時間を高付加価値業務へシフト

削減された人員は、単に人件費を減らすのではなく、

  • 顧客への丁寧な電話対応

  • 顧客ニーズの深掘り

  • 提案型のコミュニケーション

といった“接客品質向上”へ再配置された。

ナゴミヤは、効率化と同時に**顧客満足度も向上させる「攻めの効率化」**を実現した。



4. 新規顧客獲得の急拡大

4.1 ECサイトを通じた新たな集客導線

Bカート導入によって、ナゴミヤは初めて「Web集客」を獲得。

  • Web検索→会員登録→発注という新規顧客化フローが整備された。


4.2 新規登録数の増加

  • 導入前:1日50件

  • 導入後:1日70〜100件(最大2倍)

年間換算では、7,000〜15,000件の新規顧客が追加される計算になる。


4.3 新規顧客層の拡大

Bカート化により、顧客層が大きく拡大した。

従来顧客

  • 和菓子店

  • 食品スーパー

新規に増加した顧客

  • 飲食店

  • 旅館・ホテル

  • 土産店

EC導入が、ナゴミヤの販路を一気に“異業種”へ広げたことがわかる。



5. 数値で見る成果

5.1 業務効率化の成果

指標

導入前

導入後

人員

2名

1名(50%削減)

FAX受注

あり

完全撤廃

入力ミス

多発

大幅に減少

処理時間

長い

劇的に短縮


5.2 新規顧客獲得の成果

  • 新規登録数:最大2倍

  • 年間新規顧客:約7,000〜15,000件

  • EC集客による自動化された顧客獲得モデルを構築


5.3 業務効率化と売上拡大の両立

  • 人員半減しながら、

  • 顧客数は倍増し、

  • 売上が拡大する成長モデルが実現した。



6. 組織面での副次効果

  • 単純作業から解放され、従業員のモチベーションが向上

  • 紙カタログ発行コストが削減

  • ヒューマンエラー減少により顧客満足度が向上

EC導入が、組織運営の質そのものを改善した。



7. 他社事例との比較から見える示唆

豊洲漁商産直市場(Bカート+kintone併用)と比較すると、

  • 共通点:受注効率化、新規顧客開拓、人員削減

  • 相違点:豊洲は売上1.5倍・客単価1.2倍と売上側の伸びが顕著

ただし、ナゴミヤは異業種開拓に成功した点が大きな特徴である。



8. 業界への示唆

8.1 中小卸売業DXのロールモデル

  • 月額9,800円で始められる低リスク導入

  • 最短3日のスピード

  • 業務効率化と成長を両立

  • 新規顧客の自動獲得

中小企業でもDXを「継続的に回す」ことが可能であることを示している。


8.2 “今こそBtoB-EC” の時代背景

  • コロナ禍でデジタル需要が急増

  • 飲食業を中心に仕入れ先の多様化が進行

  • FAX・紙文化の限界が顕在化

このタイミングでのEC化は、極めて戦略的だった。



9. 今後の展望

ナゴミヤはさらなるDXを計画している。

  • 仕入れ側(メーカー)との受発注もWeb化

  • 社内オペレーションのさらなる自動化

  • B2Bデジタル・プラットフォーム化の推進



総括

株式会社ナゴミヤは、Bカート導入により

  • FAX完全撤廃

  • 受注人員50%削減

  • 新規顧客登録数の倍増

  • 異業種顧客の獲得

という、効率化と成長を同時に達成する大規模な事業改革を実現した。

特筆すべきは、効率化で浮いた人材を「顧客対応」という付加価値領域へ再配分し、顧客満足度と売上成長を同時に高める仕組みを構築した点である。

ナゴミヤの取り組みは、中小卸売業がDXで未来を切り開くための、極めて実践的なロールモデルと言える。



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