人がいないからこそDX──在庫・受注・問い合わせを自動化して「省人EC」に変える方法
- 7 時間前
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「人がいない」現場から始まるDX
多くの中小EC事業者は、「売上は伸びているのに人手が足りず、現場が回らない」という課題を抱えています。
在庫確認、受注処理、問い合わせ対応といった日々のルーティン業務に追われ、本来注力すべき「売上を伸ばすための仕事」や「商品企画」「マーケティング」に手が回らないまま、疲弊していくケースは少なくありません。
この状況を抜け出すためには、「人が足りないからDXする」という発想の転換が必要です。
在庫・受注・問い合わせといったバックヤード業務を自動化し、少人数でも効率的に運営できる「省人EC」の仕組みを構築することで、事業の持続性と成長性を同時に実現することが可能になります。
本稿では、実際の企業事例をもとに、在庫・受注・問い合わせの各領域における自動化の方法と、その実務ポイントを解説します。
在庫管理を自動化する──「見える化」と「一元化」でムダを削減する
事例1:三誠商事株式会社──RPAで年間800時間の業務削減
スポーツ用品の企画・輸入・EC販売を行う三誠商事株式会社は、RPAの導入により在庫管理や請求関連業務を自動化し、年間約800時間の工数削減を実現しました。
導入前は、
・各ECモールから注文データをダウンロード
・在庫管理システムへの手動反映
・CSVファイルの加工とアップロード
・倉庫ごとの在庫確認と一覧化
といった定型作業を毎日繰り返しており、担当者の大きな負担となっていました。
これらをRPAで自動化したことで、在庫データの取得・整理・反映が完全に自動化され、担当者は在庫戦略や商品計画といった付加価値の高い業務に集中できるようになりました。
このように、「CSVのダウンロード→加工→アップロード」といった定型作業は、自動化による効果が非常に高い領域です。
事例2:在庫管理システム導入による業務の可視化と効率化
在庫管理システムの導入により、
・リアルタイムでの在庫状況の把握
・欠品や過剰在庫の防止
・在庫の保管場所や履歴の可視化
が可能になります。
これにより、Excelや手作業による管理から脱却し、人的ミスの削減と業務効率化を同時に実現できます。
また、将来的にはAIによる需要予測や自動発注との連携も可能となり、さらなる省人化につながります。
事例3:ネクストエンジンによる複数店舗の在庫一元管理
EC一元管理システム「ネクストエンジン」は、複数のECモールや自社ECを運営する事業者の在庫管理を自動化します。
食品メーカーやアパレル企業などの事例では、
・複数店舗の在庫を一画面で管理
・在庫数の自動連携
・売り越しや欠品の防止
が実現され、受注増加にも対応可能な運用体制が構築されています。
在庫DXの実務ポイント
・Excelによる手動管理からの脱却を最優先とする・毎日・毎週発生するCSV処理を自動化対象として特定する・複数チャネルの在庫を一元管理できる仕組みを導入する
在庫の可視化と自動化は、省人ECの最初のステップです。
受注処理を自動化する──フロー設計により作業時間を大幅削減
事例4:小規模EC事業者──受注処理時間を87%削減
ある小規模EC事業者では、楽天市場や自社ECなど複数チャネルの受注処理を手作業で行っており、1日2〜3時間、月60時間以上を受注処理に費やしていました。
Pythonによる自動化システムを導入し、
・注文データの自動取得
・CSVの自動統合
・配送ラベルの自動生成
・在庫データの自動更新
を実現した結果、
受注処理時間は2時間/日 → 15分/日へ削減(87%削減)
月間作業時間も約60時間から約7.5時間へと大幅に削減されました。
さらに、発送遅延や誤配送も解消され、業務品質の向上にもつながりました。
事例5:RPAによる受注処理の完全自動化
RPAの導入により、
・受注メールの取得
・基幹システムへの登録
・在庫更新
・出荷ステータスの更新
といった一連の処理を自動化することで、少人数でも大量の受注処理が可能になります。
事例6:帳票作成の自動化により事務作業を1/10に削減
ネクストエンジンとGoogle Apps Scriptを組み合わせることで、
・受注データから帳票を自動生成
・請求書や出荷データの自動作成
が可能となり、事務作業時間を従来の1/10まで削減した事例も報告されています。
受注DXの実務ポイント
・1日2時間以上かかっている定型作業を優先的に自動化する
・CSVの取得
・加工
・登録の一連の作業は自動化対象とする
・例外処理のみを人が対応する運用設計を行う
問い合わせ対応を自動化する──チャットボットで省人化と顧客満足を両立
事例7:マガシーク──問い合わせ数を26%削減
ファッションECのマガシークは、AIチャットボットを導入し、
・配送状況
・返品
・交換
・支払い方法
などの問い合わせを自動対応することで、問い合わせ数を26%削減しました。
これにより、オペレーターは複雑な問い合わせへの対応に集中できるようになりました。
事例8:AIチャットボットにより問い合わせ対応の80%を自動化
別のEC事業者では、AIチャットボットを導入することで、
・よくある質問の自動対応
・24時間対応体制の実現
が可能となり、問い合わせ対応の約80%を自動化しました。
これにより、サポート工数を大幅に削減しながら、顧客満足度を維持することに成功しています。
問い合わせDXの実務ポイント
・FAQの上位項目からチャットボットに対応させる
・営業時間外対応を自動化する
・人は例外対応に集中する
「省人EC」を実現するDX設計のポイント
1. 作業時間が長い業務から自動化する
時間がかかっている順に業務を整理し、優先的に自動化します。
2. SaaSを活用し、自作にこだわらない
在庫管理、受注管理、チャット対応などは、既存のSaaSを活用することで迅速かつ低リスクで導入できます。
3. 業務フローを可視化する
自動化の処理内容をマニュアル化し、属人化を防ぎます。
4. DXの目的を「価値創出」に置く
DXの目的は単なる人員削減ではありません。
自動化によって生まれた時間を、
・商品開発
・マーケティング
・顧客体験の向上
といった価値創出に振り向けることが重要です。
中小ECが今すぐ始めるべき「省人EC」への第一歩
まずは、
・在庫管理
・受注処理
・問い合わせ対応
の中で、最も時間がかかっている業務を特定します。
次に、
・SaaSで代替できるか
・RPAで自動化できるか
を検討し、小さな自動化から始めます。
特に効果が高いのは、
・CSV処理の自動化
・受注処理の自動化
・FAQ対応の自動化
です。
人材不足が常態化する現在において、「人を増やす」ことを前提とした運営は限界を迎えつつあります。
これからのECに必要なのは、「人が少なくても成長できる仕組み」を構築することです。
バックヤード業務のDXにより、事業者は本来注力すべき「売上を生み出す仕事」に集中できるようになります。
人がいない今こそ、「省人EC」への転換を進める最適なタイミングと言えるでしょう。
参考文献
























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