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日本EC市場における旅行・サービス領域の拡大と海外メーカーへの示唆

国内消費者向けEC市場(BtoC-EC)は2024年度に26.1兆円(前年比 +5.1%)と拡大を続けている。その中でも、旅行・飲食・チケット・金融・理美容・オンライン診療などの「サービス系EC」領域は、生活者の非対面消費の定着や予約・決済のデジタル化を背景に、特に存在感を高めている。本稿では、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」の公的データを基に、サービス系ECの市場動向と海外事業者にとっての参入の視点を整理する。



1. サービス系EC市場の概況

2024年度におけるサービス系ECの市場規模は8.2兆円となり、BtoC-EC市場においてモノからコト(体験・予約)消費へのオンライン移行が進んでいる点が特徴である。


1.1 旅行サービス市場

  • 市場規模:約3.52兆円

旅行予約は、オンライン旅行代理店(OTA)やモバイルアプリ予約など事前計画型のオンライン行動の定着が拡大要因となっている。


1.2 飲食サービス市場

  • 市場規模:約0.97兆円

宅配・テイクアウト予約は、共働き世帯の増加と都市部のライフスタイル変化に伴い、利便性・即時性の需要が継続している


1.3 チケット・娯楽サービス市場

  • 市場規模:約0.65兆円

スポーツ・コンサート・劇場などの興行において、電子チケットやモバイルQR入場が一般化し、来場体験全体がデジタル化している。


1.4 金融サービス市場

  • 市場規模:約1.10兆円

保険・投信・ローンなどの手続きオンライン化が進展し、無人対応システムやチャットボットによるサポートが普及している。


1.5 理美容・健康サービス市場

  • 市場規模:約0.38兆円

美容院予約・オンライン診療などの事前予約 × モバイル型行動が生活習慣として根づいている。



2. サービス系ECの成長背景

  • 非対面消費行動の定着コロナ禍をきっかけに普及したオンライン予約・遠隔体験が定着。

  • モバイル・アプリUXの向上ワンタップ予約、プッシュ通知、アプリ内リピート促進。

  • 多様な決済オプションクレジットカード、電子マネー、QRコード、後払いなど。

  • データ活用の高度化行動履歴を基にしたレコメンド、価格最適化、顧客セグメント分析。

  • 公的支援による後押し中小企業のオンライン予約・電子チケット導入支援が継続。



3. 海外メーカー・サービス事業者にとっての戦略機会

領域

参入視点

旅行・観光体験

訪日客向けオンライン予約・多言語導線の提供

飲食・デリバリー

ゴーストキッチン・ブランド単位のオンライン展開

エンタメ・チケット

ライブ配信・デジタル限定コンテンツ提供

金融・保険

InsurTech/FinTechモデルでのオンライン契約支援

理美容・健康

遠隔診療・セルフケアデバイスとアプリ連携

いずれも、「予約・購入・アフターサービスを一貫してモバイル上で完結できるか」が差別化の鍵となる。



4. 参入に向けた実務上の留意点

  • 言語・文化適応:UI/UX、顧客接点、表現トーンにローカル対応が必要

  • 法令対応:旅行業法、食品衛生法、医療法、個人情報保護法 など

  • 決済・請求設計:現地決済プロバイダとの接続

  • パートナー連携:OTA/デリバリー/金融機関/医療機関などと協業体制を構築



5. 展望

旅行・サービス系ECは、次世代デジタル戦略フェーズへ移行します。ライブコマースによる「疑似体験消費」、AIガイドによるチャットボット、AR/VR仮想体験、サステナビリティ連携(カーボンオフセット旅行)など、消費者の価値観変化に対応する新たなビジネスモデルを創出します。海外メーカーは、これら先進技術と日本市場固有のサービスニーズを組み合わせ、デジタル&リアル両面での差別化戦略を展開することで、成長重視の日本の旅行・サービスEC領域で大きな成果が得られるでしょう。

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