ライブ配信で見られないトラブル対策:インターネット回線品質の重要性
- あゆみ 佐藤
- 1 日前
- 読了時間: 5分
はじめに:「見られるライブ配信」が実現する条件
ライブコマースが広がるほど、企業や配信者が直面する最大の課題の一つが「配信トラブルによる信頼の毀損」です。映像が止まる、音が途切れる、画質が荒れる――それだけで視聴体験は崩れ、購入機会も失われます。
高級なカメラや照明、優れた台本があっても、回線が不安定ならすべてが台無しになります。だからこそ、ライブ配信の成功を支える最重要基盤は「インターネット回線品質」です。
本稿では、ライブ配信に必要な技術要件(特に上り速度)、失敗が起きやすいポイント、そして現場で再現できる実装手順までを整理します。
ライブコマースに必要な回線速度:「上り速度」が重要
上り速度と下り速度の違い
ライブ配信でまず理解すべきは、「上り」と「下り」は別物だということです。
下り速度:インターネットから端末へ受信する速度(YouTube視聴・SNS閲覧で重要)
上り速度:端末からインターネットへ送信する速度(ライブ配信で最重要)
ライブ配信は、映像・音声をプラットフォームへ送信し続ける行為です。つまり律速になるのは上り速度です。一般の回線契約は下りが強く上りが弱い「非対称」になりがちで、ライブ用途ではここが盲点になります。
プラットフォーム別「推奨」は単一値で考えない
プラットフォームの推奨値は、実際には「解像度・フレームレート・コーデック」で変わります。たとえばYouTubeは、1080pでも30fpsと60fpsで推奨ビットレートが異なります。
そのため、本稿では「最低ライン」ではなく、運用で事故を起こしにくい考え方として次を基準にします。
配信設定(ビットレート)は公式推奨を参照して決める
上り回線は、配信ビットレートの“2倍以上”を目安に確保する(混雑・揺らぎ・オーバーヘッド対策)
YouTubeの推奨ビットレート(例)は公式が表で示しています。 Twitchもガイドラインで1080p/60fpsの設定例(CBR 6000kbps等)を提示しています。
ライブコマースにおける実運用の目安
ライブコマース(特にコスメ・アパレルなど“見せ方”が売上に直結する商材)では、最低要件ギリギリの回線だと、少しの揺らぎで画質が崩れます。そこで、現場での目安は次のように置くと安定します。
1080pで安定配信:上り 10〜20Mbps を「最低限の安心ライン」
複数カメラ/高ビットレート運用:上り 20Mbps以上
複数プラットフォーム同時配信:上り 30Mbps以上(できれば余裕を持つ)
ここで重要なのは「理論値ではなく、実測の最低値で判断する」ことです。
失敗事例から学ぶ:回線品質不足が招く典型パターン(想定例)
※以下は実際に現場で起きがちなパターンを、分かりやすくするために整理した想定例です。
例1:産地からの配信でモバイルWi-Fiが不安定
現場でモバイル回線を使うと、理論値は速く見えても、場所・混雑・遮蔽物で実測が大きく落ちます。結果、映像が乱れ、音が途切れ、紹介計画が崩れて配信価値そのものが低下します。
よくある原因
実測の上りが必要水準に届かない
複数デバイスが同じ回線を共有して帯域が奪い合いになる
移動や建物(ビニールハウス等)で電波条件が変動する
例2:照明不足が“通信品質”にも影響する
暗い環境ではカメラがノイズを増やし、圧縮効率が落ちて「同じ品質に見せるために」より高いビットレートが必要になりがちです。結果として、回線が弱いと画質がさらに破綻し、「見えない」「色が違う」というコメントが増え、購買判断にブレーキがかかります。
例3:同時配信で“合計ビットレート以上”が必要になる
同時配信は単純な足し算だけで考えると事故ります。実際には接続維持やバッファ、再送などのオーバーヘッドがあり、余裕のない回線だと不安定化しやすい。たとえば、各プラットフォームの配信設定を積み上げた“合計”に対して、さらに上り余力を確保するのが現実的です。
回線品質を確保する実装手順(現場で再現できる形)
1. 有線(光回線)+有線LANを基本にする
Wi-Fiよりも、配信PCは可能な限りLANケーブル直結が安定します。モバイル回線はバックアップとして位置づけるのが安全です。
2. 事前の速度テスト(必須)
配信直前に、必ず「上り」「遅延」をチェックします。Fast.com はNetflixが提供するスピードテストで、アップロードや遅延も確認できます。 OoklaのSpeedtestも一般的に使われています。
ポイント
1回だけでなく複数回測定し、平均値と最低値を見る
配信会場の“本番位置”で測る(場所で結果が変わる)
3. プラットフォーム側のテスト配信を必ず行う
YouTubeなら公式の推奨ビットレートを参照し、設定が警告を出さないか確認します。 同時配信の場合は、全プラットフォームを同時に立ち上げて最低5分は回して挙動を見ます。
4. 配信中のモニタリング(推奨)
OBSなど配信ソフトの統計表示で、ドロップフレームやビットレートの揺れを監視します。より詳細に見るなら、Wiresharkでパケットロスの兆候を把握する考え方もあります。
5. バックアップ回線を用意する(重要配信では実質必須)
メイン:光回線(有線)
バックアップ:モバイル回線/スマホテザリング等
「落ちてから考える」では遅いので、切り替え手順(誰が・何を・どの順で)まで事前に決めておきます。
配信トラブルが経営に与える影響:短期の売上より、長期の信頼
配信トラブルは、当日の売上を落とすだけではありません。「見たいのに見られない」体験は、視聴者の期待を裏切り、次回以降の視聴・購入のハードルを上げます。
ライブコマースが成熟するほど、視聴者は“放送品質”を当然視します。だからこそ、回線品質は演出や機材以上に、最優先の投資対象になっていきます。
結論:「見えない基盤」への投資が、見える成果を生む
ライブコマースは「商品」「配信者」「演出」といった“見える要素”だけでは勝てません。まず必要なのは、高品質で安定したインターネット回線という“見えない基盤”です。
事前の速度テスト、モニタリング、バックアップ回線――一見地味な準備が、信頼を守り、売上機会を取りこぼさない最短ルートになります。そしてこの基盤を最初から押さえた企業ほど、配信が“当たり前の販路”になったときに強い競争力を持ちます。
参考資料
YouTube ヘルプ「ライブ配信の推奨エンコード設定(解像度・fps別の推奨ビットレート)」
Twitch「Broadcasting Guidelines(推奨設定:1080p/60fpsで6000kbps等)」
Netflix「FAST.com speed test(アップロードと遅延測定について)」
Ookla「Speedtest(アップロード速度・遅延の測定)」
Wireshark Wiki「Packet loss(パケットロスの考え方)」




























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