マイクロインフルエンサー主流による個別最適化の加速:ライブコマース新時代の切り札
- あゆみ 佐藤
- 18 時間前
- 読了時間: 7分
はじめに:パラダイムシフトが起きている
2025年のライブコマース市場は、大きな転換点を迎えています。かつての成功モデルである「フォロワー数が多い大型インフルエンサー1人による爆発的な売上」から、「ニッチ領域に強い複数のマイクロインフルエンサーによるポートフォリオ戦略」へ、シフトが加速しています。
中国市場では、KOLの李佳琦(Austin Li)が大型セール期のライブ配信で巨額の取引を生み出した事例が広く知られています。たとえば、EC大型セールの事前販売日に、彼の配信が大きな売上を記録したと報じられています。 一方、日本市場では「有名だから売れる」よりも、「誰が、どの文脈で勧めるか」が成果を左右しやすくなりました。その結果、フォロワー数1~10万人規模のマイクロインフルエンサーが、より高い反応、より現実的なコスト、そして何より“信頼に基づく購入”を作りやすい手段として再評価されています。
本稿では、なぜこのシフトが起きているのか、そしてマイクロインフルエンサーを活用したライブコマースの個別最適化戦略がどのように成果につながるのかを、検証可能な事例とあわせて整理します。
大型インフルエンサーの落とし穴:フォロワー数と購入の断絶
高コスト・低エンゲージメントの悪循環
従来、ライブコマースの成功=「フォロワー数の多いインフルエンサー」という図式が成立していました。しかし、この前提は2025年に揺らいでいます。一般に、規模が小さいほどエンゲージメント率が高くなりやすい傾向が、複数のレポートで示されています(指標定義やプラットフォームによって数値は変動します)。
重要なのは、フォロワー総数が大きいことと、購入に近い熱量の高い視聴者が集まることは別、という点です。大型インフルエンサーの配信はリーチが出やすい一方、視聴者の関心が分散しやすく、「見たけれど買わない」層も増えがちです。結果として、単価が上がりやすいのに購買効率が読みづらい、という構造になりやすいのです。
「誰から買うか」という信頼の課題
ライブコマースは、商品理解と同時に「配信者への納得」が購買を左右します。購入者が重視する要素としては、商品理解が深まる説明、配信者への安心感、双方向で疑問が解消されることなどが挙げられています(この点は調査の公開資料で傾向が確認できますが、比率の数値は資料側の記載範囲に依存します)。
大型インフルエンサーは、その知名度ゆえに「広告・宣伝」と受け取られやすい場面があります。フォローしている視聴者の多くが“配信者のファン”であって、紹介される商品のニーズを持つ購買層とは限りません。これに対し、マイクロインフルエンサーは「専門性」「生活者としてのリアリティ」「距離の近さ」で信頼を作りやすく、結果として購買に必要な“最後の納得”が起きやすい、という強みがあります。
マイクロインフルエンサーの3つの強み
1. ニッチ領域での圧倒的な専門性
マイクロインフルエンサーは、「美容」「料理」「ダイエット」「ペット」「ハンドメイド」など特定領域に強いケースが多く、領域内でのポジションが明確です。商品を“万人向けに薄く”伝えるのではなく、“刺さる層に深く”届けやすい。ここが大型起用との差になります。
2. フォロワーとの親密な関係性とUGC創出
マイクロインフルエンサーの強さは「投稿後の会話」にあります。コメントの往復が生まれやすく、視聴者は「参加している感覚」を持ちやすい。これがUGC(ユーザー生成コンテンツ)を誘発します。UGCは、広告よりも“生活者の証拠”として効きやすく、二次利用(広告素材・ECレビュー強化・公式SNS運用)にも展開できます。
3. 個別最適化による購買層の拡大
大型インフルエンサー1人の配信では、どうしても視聴者属性が偏りがちです。複数のマイクロインフルエンサーをポートフォリオで起用すれば、同一商品でも「肌悩み別」「ライフスタイル別」「利用シーン別」に切り分けて訴求できます。たとえばスキンケアなら、「敏感肌」「大人ニキビ」「乾燥特化」など、課題別に語れる人を組み合わせることで、同じ商品でも“刺さり方”を最大化できます。
具体事例から学ぶ:マイクロインフルエンサー戦略の実装
ケース1:マイクロ〜ミドル×CRM(LINE公式+Lステップ)で初月売上を作る
マイクロ〜ミドル規模の発信者が、LINE公式アカウントやLステップなどの仕組みと組み合わせることで、販売予測・再アプローチ・限定オファーの設計がやりやすくなります。Lステップ側の公開事例として、初月売上を作ったケースが紹介されています(詳細条件は事例ページの記載範囲に依存します)。 ポイントは、インフルエンサー施策を“単発の拡散”で終わらせず、友だち追加→クーポン→告知→販売→フォローという一連の導線に落とし込むことです。
ケース2:Qoo10のライブコマース専用スタジオ(渋谷)
Qoo10が東京・渋谷にライブコマース専用スタジオを開設し、複数ブランドが出演できる環境を整備したことが報じられています。記事では、配信1回で売上が1億円を超えたケースがあったことにも触れられています。 このモデルは、「一発の大型配信」よりも、「複数の配信者・複数ブランド・継続運用」で売上を積み上げる方向と相性が良い。マイクロ〜ミドルのリレー運用は、まさにこの設計に適合します。
実装における3つの要点
複数起用でリスク分散し、多層的リーチを作る炎上・不祥事・相性不一致など、単一依存のリスクを下げつつ、属性の違う購買層に広げられます。
ハッシュタグ/テーマを統一し、キャンペーンとして束ねる投稿が点で散らばると効果が測りにくい。テーマ統一で検索・回遊が生まれ、UGCの増幅にもつながります。
二次利用を前提に、素材として回収できる設計にする配信・投稿・UGCを“その場で終わらせない”。広告・EC・店頭・営業資料へ展開することで、投資効率が一段上がります。
測定とPDCAの仕組み
マイクロインフルエンサー戦略は、回すほど強くなります。
短期(~1週間):エンゲージメント、クリック、保存、コメントの質
中期(1~3ヶ月):売上、CPA、指名検索の増加、再訪
長期(3~6ヶ月):リピート率、LTV、コミュニティ化
さらに実務的に効くのが、購入後アンケートで「どこで知ったか」を聞くことです。アトリビューションでは拾い切れない“最後の一押し”を、運用側で言語化できます。
2025~2026年のトレンド:マイクロインフルエンサーの新展開
TikTok Shopとの親和性
TikTok Shopは日本でも展開が進み、ローンチ以降の動きが報じられています。 TikTokはフォロワー規模だけでなく、コンテンツ反応を起点に拡散が起きやすい特性があり、マイクロインフルエンサーでも勝ち筋を作りやすい。ライブ×購入導線の整備が進むほど、「小さく深く刺す」戦略は強くなります。
複数プラットフォーム戦略による相乗効果
TikTokで発見→YouTubeで理解→Instagramで生活導入、のように、役割分担でファン化を進める設計が増えています。プラットフォームの違いを前提に“全体で一つの導線”を作る発想が重要です。
結論:個別最適化の時代へ
2025年のライブコマースは、「大型インフルエンサー1人による爆発」から、「複数マイクロインフルエンサーによる持続的成長」への移行局面にあります。これは戦術の変化ではなく、企業が顧客の個別ニーズにどこまで向き合うか、というマーケティング哲学の変化です。
今後の勝ち筋は、マイクロインフルエンサーと信頼関係を築き、顧客との接点を共同で設計できるかにかかっています。高額な単発投資から、複数のニッチなクリエイターへの分散投資へ。移行できた企業が、2026年以降の市場で優位を取りやすくなるはずです。
参考文献・外部資料
HypeAuditor(インフルエンサー規模別のエンゲージメント傾向)
eMarketer(インフルエンサー規模と反応率に関する解説)
SCMP(李佳琦のライブ配信売上に関する報道)
ネットショップ担当者フォーラム(Qoo10のライブコマース専用スタジオと売上事例)
WWD JAPAN(TikTok Shopの日本展開に関する報道)
NTTコム リサーチ(ライブコマース調査:認知・視聴・購入の基本データ)
Lステップ(LINE公式×ステップ配信の公開事例)




























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