ライブコマーサー育成資格 制度化:日本の「売上を稼ぐプロ」育成システム
- あゆみ 佐藤
- 22 時間前
- 読了時間: 6分
はじめに
資格制度の導入がもたらした市場の変化国内のライブコマース市場は拡大とともに、配信スキルの質のばらつきという課題を抱えるようになりました。視聴者を集められる配信者は増えた一方で、「売上につなげられる人」と「盛り上げられるが購買に結びつきにくい人」の違いが見えづらいまま、案件の発注や人材採用が進む局面も少なくありません。
こうした背景のもと、近年は「育成」と「認定」をセットにした取り組みが整備されつつあります。たとえば、株式会社Sホールディングスは6ヶ月の育成プログラムを公開しており、基礎から実践、検定試験対策まで段階的にスキルを習得する設計を提示しています。また、ライブコマーサー推進協議会も、ライブコマーサーの育成・認定を行う旨を明記しています。さらに、東京モード学園と共催したライバーコンテストの実施など、産学連携の動きも確認できます。
本稿では、資格・育成の制度化が何を標準化し、どのように市場の信頼を支えるのかを、制度の構造と運用思想の観点から整理します。
ライブコマーサーとは
「ライブコマーサー」という職能の定義従来の「ライバー(ライブ配信者)」は、ゲーム、音楽、雑談など配信ジャンルを問わない広い概念でした。これに対して「ライブコマーサー」は、販売に直結する役割を担う職能として、より明確に位置づけられています。
ライブコマーサーとは、商品の魅力を言葉と実演で立体的に伝え、視聴者の不安や迷いを解消し、購買の意思決定を後押しできる人材です。単に話が上手い、フォロワーが多いといった要素だけではなく、商品理解、接客コミュニケーション、購買導線設計、改善運用までを含めた総合力が求められます。
「人で売る」スキルの再評価ライブコマースが再発見したのは、「人を介した販売」が持つ説得力です。ECでは、スペック・価格・口コミが判断材料の中心になりがちですが、ライブ配信では配信者の言葉、表情、実演、コメント対応が「安心感」や「納得感」を生み、購入の心理的障壁を下げます。
そのため育成制度では、商品知識そのものだけでなく、「どう伝えるか」「どう不安をほどくか」「どう信頼を積むか」が重点領域になります。これは、伝統的な実演販売やテレビ・ラジオショッピングの知見が、デジタル上で再編集されている流れとも言えます。実際、テレビ・ラジオショッピングでMCを務めた馬場雄二氏が、退社後にライブコマースや配信者育成に取り組んでいることも報じられています。
「段階設計」制度化が進む育成プログラム
6ヶ月育成プログラムに共通する「段階設計」制度化が進む育成プログラムは、多くが「基礎→実践→検定対策・応用」という段階設計を採っています。株式会社Sホールディングスの育成プログラムも、基礎から実践、検定試験対策まで段階的に学ぶ構造を掲げています。
ステップ1:基礎(理解と土台づくり)最初の段階では、ライブコマースの全体像、通常のライブ配信との違い、購買心理の基本、信頼構築の考え方などを体系的に学びます。ここで重要なのは、配信テクニック以前に「視聴者が何に不安を感じ、何に納得するのか」という構造を理解することです。
ステップ2:実践(配信設計と運用)次の段階では、配信の組み立て、商品説明の設計、コメント対応、限定施策の扱い、事前告知や導線設計など、実務の技能を磨きます。学ぶだけでなく、実際の配信を通じて改善点を見つけ、修正を繰り返す運用力が鍛えられます。
ステップ3:検定対策・応用(再現性の確認)最終段階では、試験対策やロールプレイ、模擬配信を通じて、スキルの再現性を確認します。単発の成功ではなく、別の商品、別の視聴者層、別の配信条件でも一定の成果を狙えるかが、実務では問われます。
検定・認定が提供する3つの価値
透明性の確保企業側が最も困るのは、「この配信者に任せた場合、どの程度の品質が期待できるのか」が見えないことです。認定制度は、少なくとも一定の到達基準を満たした人材であることを示すシグナルになります。ライブコマーサー推進協議会も、育成・認定を行うことを明示しています。
品質の標準化案件ごとの当たり外れが大きい市場では、発注側は慎重になり、結果として市場の成長速度も鈍ります。一定の標準が共有されれば、企業は投資判断をしやすくなり、人材側も学ぶべきポイントが明確になります。
キャリアパスの明確化これまでのライブ配信は「続けるしかない」世界になりやすく、伸び悩んだときの打ち手が曖昧でした。育成と認定がセットになると、基礎習得→実践→評価→再学習という成長ループが構造化され、職能としての道筋が見えます。副業・転職・独立など、多様な選択肢にもつながりやすくなります。
資格取得後の「継続学習」が前提になる制度化のもう一つの特徴は、取得したら終わりではなく、運用の変化に合わせて学び直す設計が組み込まれている点です。プラットフォームの仕様やアルゴリズム、広告運用の作法、配信フォーマットは変化が早く、現場でのアップデートが欠かせません。
そのため、補講・勉強会・メンタリング・コミュニティ運営・案件マッチングなど、実務の場と学習の場を往復できる仕組みが、今後ますます重要になります。
市場への影響
発注の安心感と職能の格上げ認定制度が広がるほど、企業は「誰に任せるべきか」を説明しやすくなり、配信者側も「何を強みにすべきか」を言語化しやすくなります。結果として、ライブ配信が“発信の場”から“販売の場”へと、より明確に位置づけられていきます。
また、教育機関との連携も象徴的です。株式会社Sホールディングスは、東京モード学園と産学連携でライバーコンテストを実施しており、若い世代の「配信力」を発掘・育成する動きが表に出ています。
2026年~2027年の展望今後は、認定の段階がより細分化されたり、業種別の専門領域(美容、アパレル、食品など)に特化した学習・認定が整備されたりする可能性があります。加えて、配信ログやコメント、購入行動のデータを用いた改善が前提になるほど、分析リテラシーを含む「総合職能」としての価値が高まります。
さらに、配信技術の評価にAIが入り始めれば、話速、言い回し、コメント対応の質、商品提示のタイミングなどが客観指標化され、育成がより“技能化”していく余地もあります。重要なのは、テクノロジーが評価を置き換えるのではなく、現場の成果に結びつく改善を速く回すための補助線として使われることです。
結論
「配信者」から「売上をつくる専門職」へライブコマーサー育成資格の制度化は、単なる“認定”の話ではありません。売上をつくるための技能を明文化し、学習と実践と評価を循環させることで、ライブコマースを産業として成熟させていく取り組みです。
「配信すれば売れる」という時代から、「配信スキルとマーケティング、そして改善運用を兼ね備えた人材が、継続的に成果を出す」時代へ。2026年~2027年にかけて、この差はさらに可視化され、企業側の発注基準や人材側のキャリア形成に大きく影響していくはずです。
参考資料
・株式会社Sホールディングス「ライブコマーサー育成事業(6ヶ月プログラム)」
・ライブコマーサー推進協議会(公式サイト)
・PR TIMES「産学連携・東京モード学園と共催イベント(ライバーコンテスト関連)」
・VIDEOR Digest+(馬場雄二氏の経歴とライブコマース活動に関する記事)




























コメント