ライブコマースの本質:PDCA改善と顧客生涯価値の構築
- あゆみ 佐藤
- 23 時間前
- 読了時間: 5分
従来のECでは、購入に至る割合(CVR)が1〜3%程度にとどまることが珍しくありません。これに対してライブコマースは、購買の起点そのものを変えます。本稿では、Tailor Appのライブコマース支援サービス「LIVURU(ライブル)」が公開している事例・発表内容に基づき、ライブコマースの戦略的実装がもたらす営業成果と、顧客生涯価値(LTV)構築の考え方を整理します。
ライブコマースと従来型ECの根本的な違い
従来型ECの購買プロセスは、「情報不足による意思決定の停滞」を構造的に抱えています。検索やSNS経由で商品ページに到達しても、得られる情報はテキスト、静止画、レビューが中心です。サイズ感や使用感、肌への刺激、素材の質感など、購入を左右する不安が残ったままのユーザーは、購入ボタンを押さずに離脱しやすい。これが、CVRが数%に収れんしやすい背景です。
一方、ライブコマースは「疑問が生まれた瞬間に、その場で解消できる」設計が可能です。視聴者がコメントで質問し、配信者が即応することで不安が減り、購入の心理的障壁が下がります。加えて、リアル店舗の対面接客ではECより高い購入率になりやすい、という比較も広く語られており、オンラインで“接客に近い状態”を作る試みとしてライブが位置づけられます。
検証可能な成功事例:大手お菓子メーカー(2022年の公開事例)
LIVURUが公表している2022年の大手お菓子メーカーの事例は、PDCA改善の価値を示す材料になります。テレビCMは15秒という制約があり、商品のキーコンセプトや背景文脈まで伝え切れないという課題がありました。そこで同社は、ライブ配信を「理解を深める場」として設計し直しています。
実施した設計は大きく3点です。
第一に、視聴導線の設計。出演するインフルエンサーによる事前告知を行い、配信そのものを見に来る動機づけを作りました。
第二に、コンテンツ企画。商品PR一辺倒ではなく「家族の絆」をテーマに据え、3日連続で「クイズ軸」「料理軸」「CMテーマ軸」という切り口を変えながら、複数の出演者で多角的に体験価値を組み立てています。
第三に、購買導線の設計。当時のInstagramの仕様上、IGTVから直接購入しにくい制約があることを前提に、迷わず購入に進める導線を用意し、配信中のアナウンスで購入方法を周知しました。
結果として、3日間の生配信中の総視聴者数は51,000人、見逃し配信を含む総視聴者数は450,000人に到達し、ライブ配信3日後に限定商品が完売、Amazonランキング入りに至ったと報告されています。ここで重要なのは、ライブが短期の販売だけでなく、30〜40分という滞在時間を通じて、従来伝え切れていなかったコンセプトや背景理解を深める接点になり得る点です。理解が深まるほど購入後の納得感が高まり、結果としてLTVに寄与する土台になります。
広告クリエイティブの最適化:ライブが「売る場」から「勝ち筋を作る場」へ
2024年以降、ライブコマースは配信そのものの売上だけでなく、広告クリエイティブ最適化の素材として扱われる事例が増えています。
スキンケア企業の事例では、ライブ配信を元にしたクリエイティブが通常のクリエイティブよりCPAが好調で、「通常に比べて41%のCPAで獲得できた」とTailor Appが発表しています。またアパレル領域では、ライブインサイトを用いた広告クリエイティブでCVRが2.7倍になった事例が公開されています。
これらが示すのは、ライブが単なる販売チャネルではなく、「購買意欲が高まる瞬間をデータで見つけ、再現可能な広告表現に落とす」ための分析基盤になりつつある、ということです。
LIVURUの統合的サービス設計:ライブとコマースを分けない
Tailor Appは、ライブを「相互コミュニケーション」、コマースを「購買設計」として一体で捉え、企画から配信、事後分析までを統合して支援する立て付けを提示しています。同社はPRで、250社以上の導入実績と累計10,000回以上の配信支援実績を掲げています。
またUGCM(ユーザー生成CM)については、Tailor Appと日テレWandsが連携し、ライブコマースの「最も売れる瞬間」をTVer広告へ接続する構想として2025年6月に発表されています。TVer広告はスキップできないため、例として15秒広告で96.0%の視聴完了率が示されています。
長期的視点:LTVを上げるためのPDCA設計
ライブコマースの成否は、単発の売上で決まるものではありません。むしろ、継続配信と改善を前提にしたPDCAが、LTVを押し上げます。改善の軸は次のように整理できます。
第1段階:テーマとターゲットの明確化誰に、何を、どの文脈で届けるかを絞る。広すぎるテーマは、コメントが散り、購買導線もぼやける。
第2段階:コメント対応の型を作る質問に答えるだけでなく、迷いが出やすい論点(サイズ感、使用感、比較、返品、成分など)を先回りして解消し、視聴者の納得を積み上げる。
第3段階:購買心理の設計を入れる限定クーポン、数量限定セット、特典などは乱用すると効きません。配信の流れの中で「納得ができた後」に提示することで、背中を押す役割になります。
第4段階:配信後の接点を設計するアーカイブの短尺化、SNSでの再配信、メールでのフォロー、使用感の回収と反映。購入後の満足を育てる仕組みが、次回購入を生みます。
この積み上げにより、新規獲得中心の戦いから、継続購入とファン化による回収構造へ移行しやすくなります。ライブの価値は、視聴者の理解・納得・信頼を短時間で高められる点にあります。
2026年の市場展開:実施が当たり前になった後に差がつく
ライブコマースは「黎明期」から「成長期」へ移行しつつあり、参入プレイヤーも拡大しています。今後は、ライブをやること自体は標準化し、差がつくのは「顧客の生涯価値を最大化する運用設計」です。初期の失敗を恐れず、配信とデータをもとに改善を回し続けられる企業が、優位性を積み上げていきます。
ライブコマースの本質は、売上を一度上げることではなく、改善で“勝ち方”を学習し、信頼と再購入の循環を作ることにあります。その循環を設計できた企業ほど、長期で強いチャネルになります。
出典
・WordStream(コンバージョン率に関する一般的なベンチマーク情報)
・IRPの平均CVRを引用した解説(EC平均CVRの目安)
・BizGarage(NTM調べとして、リアル店舗とECの購買率差に言及)
・Tailor App関連(大手お菓子メーカー事例:生配信51,000人/総視聴45万人、設計の3要素)
・Tailor Appプレスリリース(スキンケア事例:CPAが通常比41%)
・Tailor Appプレスリリース(アパレル事例:CVR 2.7倍)
・Tailor App PR(250社以上/累計10,000回以上の配信支援実績)
・UGCM発表(Tailor App×日テレWands、TVer広告の15秒96.0%視聴完了率の例示)




























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