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日本EC市場全体の成長見通し分析

はじめに:市場規模と成長率概要

2024年度の日本EC市場は、

  • 消費者向け(BtoC)EC市場26.1兆円(前年比 +5.1%)

  • 企業間取引(BtoB)EC市場514.4兆円(前年比 +10.6%)

といずれも過去最高を更新した(出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」)。

BtoC・BtoB双方で取引のデジタルシフトが続いた背景には、物流インフラの高度化、決済環境の整備、消費行動変化、DX政策、プラットフォーム競争といった複数要因が相互に作用している。



1. 成長基盤① インフラ整備の進展

1.1 物流ネットワークの高度化

大手物流企業により、配送網の最適化や都市圏を中心とした迅速配送モデルが進んでいる。食品・飲料ECでは、**2024年度に3.12兆円(前年比 +6.36%)**と堅調な拡大が見られ、温度管理対応物流が浸透しつつある点が成長を後押しした(出典:経済産業省)。

1.2 デジタル決済環境の成熟

クレジットカード・電子マネー・QRコード決済・後払い決済(BNPL)など、決済手段の多様化が進み利用障壁が低下した。また、不正取引検知やオンライン与信など、フィンテック企業によるセキュリティ強化が進展している。



2. 成長推進② 消費者行動の変化

2.1 モバイルファースト環境の定着

スマートフォンからのEC利用が主要チャネルとなり、アプリ通知・簡易決済が購買の継続性を支えている。衣類・雑貨を中心とした**ファッション関連EC市場は2.80兆円(前年比 +4.74%)**と安定成長(出典:経済産業省)。

2.2 非対面・オンライン体験の常態化

オンライン診療・遠隔学習・ライブコマース・AR試着など、デジタル上の疑似接客体験が日常利用へ浸透。**サービス系ECは8.2兆円(前年比 +9.43%)**と特に高い伸びを示した。中でも旅行予約(3.52兆円、+12.8%)、飲食デリバリー(0.97兆円、+9.6%)が成長を牽引している。



3. 成長支援③ 公的政策・地域施策

3.1 中小企業DX支援

中小企業を対象としたEC導入支援・DX推進施策が継続的に実施されている。

3.2 地方創生とEC活用

自治体・地域団体による、地場産品のオンライン販路拡大支援が進展。これにより、BtoC-EC化率は9.8%となり、前年比 +0.4pt上昇した。

3.3 インバウンドと越境ECの連動

訪日客需要の回復とあわせて、オンライン予約・電子チケットなど旅行前後のEC利用が増加した。



4. 成長競争④ プラットフォーム競争とサービス多様化

4.1 大手モールの機能進化

Amazon、楽天市場、PayPayモールなどは、会員プログラム・レコメンド強化・配送特典を軸に競争。

4.2 D2Cとブランド直販の拡大

化粧品・健康食品を中心に、顧客データに基づくCRM戦略・サブスクリプションモデルが浸透。

4.3 BtoBマーケットプレイスの拡張

部品・資材調達プラットフォームや法人向けサービスECが増加し、セルフサービス型購買が一般化。



5. 成長深化⑤ 企業のデジタルシフト

5.1 API連携と業務自動化

発注・在庫・価格データを統合管理するAPI型システム導入が進む。

5.2 データドリブン経営の普及

購買データや行動ログに基づく意思決定支援・在庫最適化・LTV改善が標準化しつつある。



6. 越境EC・インバウンド需要の拡大

2024年度の対日越境ECは、

  • 中国:2.64兆円(+8.5%)

  • 米国:3.14兆円(+6.0%)

を中心に、合計5.78兆円規模となった。化粧品・健康食品・家電・ファッションが主要カテゴリー。

訪日客は、旅行前 → 訪問中 → 帰国後 の3段階でECを継続利用する傾向が定着している。



7. 海外メーカーへの戦略示唆

戦略領域

要点

パートナー連携

物流・決済・マーケティング・CSを現地企業と共同運用

モバイル最適化

アプリ設計・簡易決済・視覚コンテンツで差別化

マルチ販売チャネル

越境EC自社サイト+大手モール併用で接点最大化

データ活用

CRMと購入ログに基づきLTV最適化

サステナビリティ対応

リユース・エコパッケージでブランド価値向上


結論

日本のEC市場は、インフラ・消費者行動・政策支援・プラットフォーム競争・企業DX相互に強化し合う構造の中で成長している。さらに、越境ECとインバウンドの循環利用モデルが新たな市場拡張を支える力となっている。


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