日本EC市場における分野別EC化率のばらつきとその取り組み
- あゆみ 佐藤
- 3 日前
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日本の電子商取引(EC)市場は、物販系、サービス系、デジタル系、企業間取引(BtoB)、個人間取引(CtoC)など多様な分野で構成されており、それぞれのEC化率(全取引に占めるECの割合)には大きな差が見られる。本稿では、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」の結果をもとに、主要分野におけるEC化率の特徴と背景、海外メーカーにとっての示唆を整理する。
1. 全体概況
区分 | EC化率 | 前年比増減 |
BtoC-EC | 9.8% | +0.4pt |
BtoB-EC | 43.1% | +3.1pt |
EC化率は全体として上昇基調にあり、とりわけ企業間取引(BtoB)においてオンライン受発注の定着が進んでいる。
2. 物販分野におけるEC化率の比較
分野 | 市場規模(兆円) | EC化率(%) |
書籍・映像・音楽 | 1.87 | 56.45 |
家電・AV機器・PC | 2.74 | 43.03 |
生活雑貨・家具・インテリア | 2.56 | 32.58 |
衣類・雑貨 | 2.80 | 23.38 |
食品・飲料・酒類 | 3.12 | 4.52 |
書籍やデジタルメディア、家電・PC分野は、商品特性や購入プロセスの確立によりEC化率が高い。一方、食品・飲料は鮮度管理や配送コストに課題があり、EC化率が低めとなっている。
3. サービス系・デジタル系分野
サービス系EC市場は、旅行、飲食、チケット、金融、理美容など、多様な予約・決済型サービスがオンラインを通じて提供されている。市場規模は示されている一方、各分野のEC化率は公表されていないため、以下は市場動向として整理する。
旅行サービス:オンライン旅行予約、モバイルアプリ経由のプラン購入が普及
飲食サービス:宅配・テイクアウト注文の定着
チケット・娯楽:電子チケットによる入場オペレーションの標準化
金融サービス:オンライン申込やAI相談チャットの活用
理美容・健康:美容院予約・オンライン診療などの事前予約が生活に定着
また、デジタル系(動画配信・音楽配信・オンラインゲーム)は取引そのものがオンラインで完結するため、消費行動のデジタル化が進んでいる。
4. BtoB-EC と CtoC-EC の動向
BtoB-ECは、部品調達、卸売、法人サービス領域で受発注プロセスの標準化が進み、EC化率が高い。
CtoC-ECはフリマアプリなどを中心に利用が広がり、個人間取引が日常的な購買選択肢として浸透しつつある。
5. EC化率のばらつきに影響する要因
商品特性 デジタル商品や小型耐久財はEC化しやすく、生鮮食品や大型商品の場合は物流・品質管理が課題となる。
消費・業務習慣 法人は取引プロセスの標準化が進みやすく、個人消費は実物確認ニーズが残る分野でEC化が緩やか。
物流・決済インフラの成熟度 コールドチェーン、設置・組立サービス、返品ネットワークなどの対応状況が分野差につながる。
規制・制度 食品衛生法・医療法など、分野固有の法的要件がEC化の進度に影響する。
6. 海外メーカーへの示唆
参入しやすい領域:家電・PC、書籍・コンテンツ、BtoB部品・サービスなどオンライン接点が確立された領域
差別化の余地が大きい領域:食品・飲料、日用品など、品質保証・物流・カスタマーサポートが付加価値となる領域
顧客体験強化:AR試用、オンラインサポート、データ活用によるパーソナライズ
パートナー連携:ECモール、BtoBプラットフォーム、物流・決済企業との協業体制構築
規制対応:表示要件、認証制度を踏まえた事前準備が重要
7. 展望
国内EC化率は今後も上昇すると見込まれ、サステナビリティ対応、D2Cブランドの拡大、AIによる運用最適化、ライブコマースなど新たな技術・サービスの導入が、分野間の差を徐々に縮小しつつ新しい市場機会を創出すると期待される。




























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