「環境負荷戦略」が「競争力」に転換する:2026年、グリーン物流が日本EC市場を制する理由
- あゆみ 佐藤
- 4 日前
- 読了時間: 7分
はじめに:「2024年問題」から「カーボンニュートラル時代」へ
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に上限規制(年960時間)が適用され、いわゆる「物流2024年問題」が現実の経営課題として浮き彫りになりました。国の試算では、2030年にはドライバー不足などにより輸送能力が約19.5%不足し、対策が進まない場合には約34%不足する可能性も示されています。
この「物流危機」は、単なる人手不足対策にとどまりません。2026年に向けて、物流の効率化はそのまま脱炭素の実装に直結し、「環境対応」が「競争力」へと転換していきます。モーダルシフト(鉄道・海上への転換)、電動化、ルート最適化は、ドライバー負荷の軽減だけでなく、カーボンニュートラル達成に向けた必須の打ち手になりつつあります。
海外メーカーにとって、この変化点で環境対応を戦略の中核に据える企業と、従来どおりコスト最小化だけで意思決定する企業の間で、競争格差が一気に広がります。
物流のCO2排出:日本市場で見落とされがちな巨大テーマ
海外メーカーが脱炭素対応を語るとき、論点はスコープ3(サプライチェーン排出)に集約されがちです。しかし日本市場では、物流そのものが「コスト」と「環境負荷」の両面で、経営の中枢に近づいています。
国内貨物輸送は、トンベースで見ると自動車(トラック等)が圧倒的な比率を占めます。一方で、長距離輸送の実態を反映しやすいトンキロベースでは、鉄道や内航海運も一定の役割を担っています。ここに、脱炭素と効率化を同時に進める余地があります。
特にモーダルシフトの効果は明確です。一般的な排出係数の比較では、同じ輸送量・距離でも、
鉄道はトラックに比べてCO2排出が大幅に小さく
海上輸送もトラックより低いとされます。つまり、長距離区間をトラックから鉄道・海上へ移すだけで、排出量を大きく下げられる可能性があります。
実例が示す「コストと環境の両立」
グリーン物流は「環境のためのコスト」だと思われがちですが、実際には「コスト削減と環境負荷軽減を同時に達成した」事例が増えています。
アスクルは、拠点間輸送に船舶を活用するモーダルシフトを進め、CO2排出量を大幅に削減した事例を公表しています。
Hondaは、EV用バッテリーパックの輸送を鉄道へ切り替えることで、CO2排出量を大幅に削減したと紹介しています。
重要なのは、これらが「理想論」ではなく、実務の中で成立している点です。輸送の構成を変えることが、燃料費や拘束時間、運行の安定性にも影響し、結果として競争力につながります。
ラストワンマイル配送:最も難しく、最も差がつく領域
ただし、長距離輸送に効くモーダルシフトだけでは完結しません。ECの競争力を左右するのは、配送センターから消費者に届ける「ラストワンマイル」です。
ラストワンマイルは、物流コストの半分近くを占めることもあると言われます。複数の配送先に小口で届ける構造上、効率が落ちやすく、環境負荷も増えやすい領域です。さらに都市部では渋滞や駐車制約が重なり、再配達やルートの重複がコスト・排出の両面で効いてきます。
この領域で、2026年にかけて導入が加速すると見られる打ち手は次の通りです。
1. 電動車両・電動アシストの活用
都市部の配送では、電動トラックや電動アシスト自転車の導入が進んでいます。停車が難しいエリアや短距離小口配送では、車両選定そのものが効率と排出量を左右します。
2. ルート最適化(データ活用)
交通状況、配送先の分布、時間帯、再配達リスクなどを織り込んだルート設計は、労働時間と燃料消費に直結します。効果は事業者の運用・前提条件で幅が出ますが、一定の改善を示す事例は複数あります。ここは「導入」よりも「継続運用で精度を上げる」ことが勝負になります。
3. 共同配送・共同輸送
複数企業の荷物を束ねることで積載率を上げ、車両台数や運行回数を抑える取り組みです。スワップボディ等を活用した共同輸送では、CO2削減と運行効率改善の効果が示された事例もあります。
4. 配送ロボット・ドローン(適用領域限定で)
全域での置き換えは現実的ではありませんが、短距離・限定エリアでの活用は、人手不足対策と環境負荷軽減を同時に狙える可能性があります。重要なのは「技術」ではなく「どこに当てるか」の設計です。
越境EC企業にとっての「国際的な脱炭素基準」
海外メーカーが日本にEC拠点を置く場合、日本国内の要請だけでなく、本国や取引先、投資家の基準にも対応する必要があります。欧州ではCBAMなど国境措置を含む政策議論が進み、米国でも投資家のESG評価が資本コストに影響しやすくなっています。
つまり、日本でのグリーン物流は「日本の消費者へのアピール」だけではありません。グローバルな資金調達や取引継続の条件として、環境責任を説明できる体制づくりが必要になります。
顧客期待値の変化:「環境配慮」が購入判断に入る
日本でも、環境配慮商品の購入意向は高まりつつあります。公的調査でも、「環境に配慮した商品について、多少価格が高くても購入したい」と考える層が一定割合いることが示されています。
ここで重要なのは、環境対応が「理念」ではなく「選ばれる理由」になり得る点です。配送における環境負荷の透明性や、選べる配送(例:急ぎ便と低負荷配送の選択肢)を用意できるブランドは、価格以外の軸で差別化しやすくなります。
2026年に向けた3段階グリーン物流戦略
海外メーカーが日本市場で競争優位を獲得するためのロードマップを、現実的に三段階で整理します。費用は規模や既存体制で大きく変動するため、ここでは目安として捉えてください。
第1段階:現状分析と優先順位付け(1月〜3月)
サプライチェーン全体のカーボンフットプリント(CFP)を把握
主要配送パターン別の排出要因を分解
モーダルシフト候補(距離・リードタイム・運用制約)を選定
ラストワンマイルのボトルネック(再配達、渋滞、拠点配置)を可視化
第2段階:試験導入と運用設計(2月〜5月)
長距離区間でモーダルシフトを部分導入し、KPIを設計
ルート最適化や共同配送のパートナー探索を開始
電動化は「適用できるエリア・便」から段階導入(車両だけでなく充電・運行体制もセットで設計)
第3段階:本格展開と対外コミュニケーション(3月〜6月以降)
成果が出た施策を拡大し、運用を標準化
配送由来の環境負荷を、社内指標として継続管理
サステナビリティ情報の開示を強化し、調達・投資家・消費者へ説明可能な形に整備
可能なら「配送オプション」を設け、顧客が選べる設計にする
期待できる効果は、排出削減だけではありません。燃料費・運行効率・人手不足対応・品質安定が同時に効き、結果として利益率や顧客体験に跳ね返ってきます。
グリーン物流が競争力になる根本理由
2026年以降、グリーン物流は「環境対応」ではなく「経営戦略」へ転換します。理由はシンプルです。
コストに直結します(燃料、拘束時間、車両稼働、再配達)
規制・取引条件に直結します(調達・投資家・国際基準)
顧客の選好に直結します(信頼、ブランド評価、購入理由)
同じ商品・同じ価格帯でも、「届け方」で企業の評価が変わる時代に入ります。だからこそ、グリーン物流を先に実装した企業は、中期的に利益率・投資効率・市場シェアで差を広げやすくなります。
結論:2026年は「グリーン物流元年」
「2024年問題」が顕在化させた物流課題は、結果としてグリーン物流への転換を加速させる引き金になりました。2026年に真剣にグリーン物流へ投資し、運用モデルを作った企業と、従来型のコスト最小化だけに依存する企業の間で、次年度以降の競争成果は大きく変わります。
海外メーカーが日本市場で「環境対応のリーダー企業」として認識されるためには、2026年前半の6か月を準備期間として使い切ることが重要です。その意思決定が、長期的な競争力を左右する経営判断になります。
https://kokuraunsou.co.jp/environment-contribution-modalshift/
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https://global.honda/jp/stories/167-2507-honda-modal-shift.html
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https://jp.hprt.com/blog/Implementing-Green-Logistics-for-Sustainability.html
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/press/pdf/kousei2025082101.pdf




























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