「エンタメ」が「販売」に融合する:2026年、ライブコマース革命で日本EC市場を制する海外メーカー戦略
- あゆみ 佐藤
- 4 日前
- 読了時間: 6分
はじめに:中国の巨大ライブコマースが日本に現実味を帯びた
中国ではライブコマースがEC成長の中核として定着し、市場規模は引き続き拡大しています。ジェトロの解説でも引用されているiResearch(艾瑞諮詢)の予測では、2025年に中国のライブコマース流通取引総額(GMV)は6兆4,172億元に達し、EC小売額に占める比率は約4分の1に迫る水準になるとされています。
一方、日本のBtoC-EC市場規模は、経済産業省の調査で2024年に26.1兆円まで拡大しています。この「中国で成熟した購買モデル」が、日本でも現実の選択肢になったことを象徴する出来事が、2025年6月30日のTikTok Shop日本ローンチです。
これは単なる新規チャネルの追加ではありません。「検索して買う」ECから、「視聴して出会い、買う」ECへのシフトが、日本でも本格的に始まったことを意味します。2026年は、その移行期の勝ち筋を最初に確立したブランドが、次の市場標準を握る年になります。
TikTok Shopの本質:「ディスカバリーEコマース」という購買設計
TikTok Shopは、従来のAmazonや楽天のように「目的買い」を起点とするECと設計思想が異なります。
従来のEC:商品を探す → 比較検討する → 購入する
TikTok Shop:動画を見ている → 商品を“発見する” → その場で購入する
TikTok自身は、この体験を「ディスカバリーEコマース」と位置づけています。つまり、発見(Discovery)と購入(Commerce)を同一導線に統合し、衝動と納得を同時に引き出す購買モデルです。
TikTok Shopの主要機能:購買導線を短縮する4つの装置
1. ショッパブル動画(インフィードショッピング)
ショート動画の視聴中に商品が紐づき、タップで購入導線へ遷移できます。重要なのは、従来の「商品ページへ遷移して熟読する」設計ではなく、没入状態を切らずに購入に進める点です。
2. LIVE Shopping(ライブショッピング)
配信者が商品を実演し、コメントで質問に答えながら販売します。ライブは「見せる」だけでなく、「誤解を潰す」「不安を解消する」「購入の背中を押す」を同時に実行できます。中国ではトップ配信者が短期間で巨額のGMVを作る事例が報じられており、構造としては日本でも再現可能です(規模の再現には時間が必要でも、型は移植できます)。
3. ショーケース(プロフィール上の商品一覧)
クリエイターやセラーのプロフィールに商品を並べ、フォロワーがいつでも閲覧・購入できる状態を作ります。「動画→購入」の単発導線ではなく、常設の購買棚を持てるのがポイントです。
4. ショップタブ(店舗タブ)
プロフィール内にショップ専用タブを設け、商品群を一覧化します。特定クリエイターをフォローしているユーザーにとって、そこは「常設店舗」として機能します。
なぜライブコマースは売れるのか:3つの購買心理が同時に動く
ライブコマースが強いのは、広告の延長ではなく、購買心理のエンジンを同時点火できるからです。
1. FOMO(今買わないと損をする感覚)
ライブは「今この瞬間」に価値があり、終了・在庫・特典などの不確実性が購買決断を前倒しします。テレビ通販の“限定演出”が、双方向で高密度に再現されます。
2. インタラクション(対話)による信頼形成
視聴者が質問し、その場で回答が返る。商品ページが抱えがちな「本当にこうなのか?」が、対話で即時に解消され、信頼が購入に直結します。
3. エンタメ性による高エンゲージメント
ユーザーは「仕様を読んでいる」のではなく、「面白いコンテンツを見ている」状態です。高い注意と感情の状態で商品が提示されるため、同じ商品でも意思決定の速度が変わります。
日本市場での初期事例:成功の鍵は「PR」ではなく「面白い動画」
日本でも、TikTok Shopを活用した初期事例が紹介され始めています。重要なのは、勝ちパターンが「企業のPR動画」ではなく、視聴者にとって面白い動画が先に存在し、そこに自然に商品が乗る構造である点です。
つまり、ライブコマースで成果を出す企業は、広告費の最適化以前に、コンテンツの設計思想を変えています。
2026年の落とし穴:「TikTok Shopだけ」に依存しない
海外メーカーが2026年に避けるべきは、TikTok Shopを“唯一解”として扱うことです。動画×コマースは複数プラットフォームで加速しています。
Instagram:リールを中心に商品タグ/ショップ機能を拡充
YouTube:ライブ配信とレビュー文脈でショッピング連携
国内勢:楽天LIVE等、既存基盤上でライブ活用を拡張
結論として、2026年の競争優位は「TikTok Shopに出店したか」ではなく、TikTok/Instagram/YouTubeなどを跨いで運用できる組織能力になります。
ライブコマース時代に必要な「新しい運営スキル」
従来のEC運営(商品ページ最適化、検索、リターゲティング)とは別物のスキルが要求されます。
1. クリエイターパートナーシップの構築
成功要因は「自社が語る」ではなく「信頼されている人が語る」。海外メーカーは、メッセージを完全統制する発想から、信頼できるパートナーに委ねる設計へ移行する必要があります。
2. ライブ前提の企画・演出・台本設計
生放送には“流れ”が必要です。完璧さよりも「自然な対話」「失敗の許容」「視聴者の質問起点の構成」が成果を作ります。
3. マルチプラットフォーム運用体制
各プラットフォームで最適な尺・編集・出演者・在庫連動が違います。そのため、従来の少人数EC体制の延長では回りません。最低限、クリエイター連携/制作/運用・分析を分業できる体制が必要になります(規模は事業フェーズに応じて段階的に拡張)。
4. KPIの再定義
ライブコマースでは、CVRだけでは判断できません。視聴完了率、平均視聴秒数、コメント率、保存・共有、ライブ滞在時間など、動画起点のKPIが売上の先行指標になります。
海外メーカーが2026年に実行すべき3段階戦略
第1段階:パイロット実施とクリエイター発掘(1月〜3月)
TikTok Shopで小さく開始(商品数を絞る)
国内クリエイター3〜5名とテスト
ショート動画を複数本+ライブを少なくとも1回実施
目的は「勝ち筋の型」を見つけること(売上最大化ではない)
コスト目安(商材・契約形態により変動)
クリエイター起用:1人あたり数十万円規模から
制作支援:内製/外注で大きく変動
TikTok Shopの手数料は、セラー向け公式案内で適格注文に対して注文ごとに売上の7%とされています(時期によりキャンペーン優遇が設定されることがあります)。
第2段階:継続配信とプラットフォーム拡大(2月〜5月)
TikTokで週次運用(ショート+月複数回のライブ)
Instagram/YouTubeなど、商材適性に応じて並走
クリエイターネットワーク拡張(量より相性を優先)
第3段階:最適化と拡大(3月〜6月以降)
A/Bテストで勝ち動画の要素を分解
ライブ時間帯、訴求軸、演出、価格・特典設計を最適化
複数プラットフォームを跨いだLTV観点の設計へ拡張
結論:2026年は「ライブコマース元年」になる
2026年、日本のECは「検索して買う」中心の世界から、「視聴して出会い、買う」世界へと重心が移ります。その転換点で、正しい組織能力とパートナー戦略を持つ企業は、市場シェアを一気に伸ばせます。逆に、従来のEC思考だけに依存する企業は、気づいたときには顧客の時間と購買が別の場所へ移動している可能性があります。
ライブコマース時代の競争優位は、商品の品質や価格だけでは決まりません。エンタメ性と信頼を両立できるクリエイターとの関係性、そしてそれを再現可能な運用モデルとして実装できるか。そこに勝敗が集約されます。
https://blog.wordvice.jp/topic/language-rules/quotation-marks/
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi/dai5/siryou3s.pdf
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/shokibo/04sHakusyo_part2_chap1_web.pdf
https://www.jaaa.ne.jp/wp-content/uploads/2012/03/0fa3f299fa714873a83a63d3b043b745.pdf
https://www.janpia.or.jp/_assets/download/dormant-deposits/result/2024/01/24149/24149_siryo.pdf
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/3249f9cbffcf017f.html
https://www.j-mac.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/11/proceedings10.pdf
https://news.yahoo.co.jp/articles/e4bbfc557663732fee4631c5df3e62fc98aac4f9




























コメント