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第10章 ホームセンターとドラッグストアのOMO戦略の未来

  • 5 日前
  • 読了時間: 5分

 OMOは、もはや単なる「チャネル統合」ではなく、「生活者の生活そのものをどう支えるか」を設計する段階へと進化している。ドラッグストアとホームセンターは、それぞれ異なる購買構造と役割を持つため、OMOの進化の方向性も大きく異なる。

 本章では、マツモトキヨシ、ツルハホールディングス、サンドラッグ、コスモス薬品といったドラッグストア大手、およびカインズ、DCMホールディングス、コーナンの事例をもとに、OMO戦略の未来像を整理する。



① ドラッグストアの未来:「生活のリピートループ」の高度化

 ドラッグストアにおけるOMOの進化は、「生活のリピートループ」をどこまで精緻に設計できるかにかかっている。

 マツモトキヨシでは、アプリ会員の来店頻度が非会員比で約1.4倍、客単価が約15%高い水準にあり、すでに「リピート購買を前提とした設計」が機能している。この構造は、在庫確認、リマインド、クーポン、健康情報などを組み合わせることで、「来店のきっかけ」と「追加購入」を同時に生み出している点に特徴がある。

 今後は、このリピート構造をさらに進化させ、薬・サプリメント・日用品・食品といった複数カテゴリを横断した「ライフサイクル購買」を一体的に設計することが重要になる。すなわち、オンラインでの事前確認・購買計画と、店舗での購入・相談を連続した体験として統合する方向へ進む。

 ツルハホールディングスも同様に、調剤・日用品・食品・健康食品を横断した購買データを活用し、来店頻度と購入カテゴリー数を同時に引き上げている。今後は、処方薬・健康情報・日用品購買を統合した「生活全体の最適化」を軸に、OMOの高度化が進むと考えられる。



② ホームセンターの未来:「プロジェクト支援」の深化

 一方、ホームセンターのOMOは、「プロジェクト単位での意思決定支援」をどこまで高度化できるかが鍵となる。

 カインズでは、オンラインでの在庫検索を起点に、DIY・リフォーム・防災・園芸などの需要が顕在化しており、特に専門性の高いカテゴリでは店舗受取率が高い傾向が見られる。これは、オンラインで計画し、店舗で実行するという購買プロセスが定着していることを示している。

 今後は、単なる在庫確認にとどまらず、「用途・施工・組み合わせ」まで含めたプロジェクト設計をオンラインで支援し、店舗では実物確認と専門的な相談を行うという役割分担がさらに明確になる。

 DCMホールディングスにおいても、DIY・外構・防災などの領域で、オンライン検索データを売場設計や接客に反映する動きが進んでいる。今後は、顧客の目的に応じた提案型売場の構築と、プロジェクト単位での購買支援が、OMOの中核機能になると考えられる。



③ データとAIの融合:OMOの高度化

 OMOの次の進化段階は、「データとAIの融合」にある。

アプリ、EC、店舗で蓄積される購買履歴・検索履歴・来店頻度などのデータを統合し、AIによって「次の来店」や「次の購買」を予測することで、売場・在庫・接客の最適化が可能になる。

 ドラッグストアでは、リピート購買のタイミング予測や健康状態に応じた商品提案が高度化し、より精緻なリマインドやレコメンドが実現される。一方、ホームセンターでは、過去の検索・購買データをもとに、DIYやリフォームの最適な資材構成や追加提案を行う仕組みが進化する。

 OMOは、「人の勘」に依存していた売場設計や接客を、「データに基づく再現性のある仕組み」へと変えていく段階に入っている。



④ 店舗とECの融合:「生活拠点」としての再定義

 OMOの進化は、最終的に店舗の役割そのものを変えていく。

 ドラッグストアでは、店舗が「健康管理と日常生活を支える拠点」として機能し、ECとアプリがその周辺を補完する構造が強まる。ホームセンターでは、店舗が「相談・体験・実行の場」として機能し、オンラインがその準備と計画を担う。

 いずれの業態においても、店舗とECは競合関係ではなく、「生活者の課題を解決するための一体的な接点」として再定義される。



⑤ まとめ:OMOの未来は「体験設計」にある

 OMOの未来は、「チャネルをつなぐ」ことではなく、「生活者の体験をどう設計するか」にある。

ドラッグストアは、リピート購買を軸とした「生活のループ」を設計し、ホームセンターは、課題解決を軸とした「プロジェクト支援」を設計する。それぞれの業態が、自らの強みを起点にOMOを進化させていくことで、店舗とオンラインはより密接に統合されていく。

 OMOとは、単なるデジタル施策ではない。生活者の行動、意思決定、購買体験を一貫して設計するための「経営そのもの」である。その進化の先にあるのは、「どこで買うか」ではなく、「どのように生活を支えるか」という競争である。



参考文献

・経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830005/20240830005.html

・マツキヨココカラ&カンパニー 統合報告書・IR資料https://www.matsukiyococokara.com/ir/

・ツルハホールディングス 統合報告書・IR資料https://www.tsuruha-hd.com/ir/

・サンドラッグ IR情報https://www.sundrug.co.jp/ir/

・コスモス薬品 IR情報https://www.cosmospc.co.jp/ir/

・カインズ 公式サイト・企業情報https://www.cainz.co.jp/

・DCMホールディングス 統合報告書・中期経営計画https://www.dcm-hldgs.co.jp/ir/

・コーナン商事 IR情報https://www.hc-kohnan.com/ir/

・日本DIY・ホームセンター協会 市場統計データhttps://www.diy.or.jp/

・総務省 家計調査https://www.stat.go.jp/data/kakei/

・電通デジタル OMO・CX関連レポートhttps://www.dentsudigital.co.jp/knowledge-charge/

・野村総合研究所 小売DX・AI活用レポートhttps://www.nri.com/jp/knowledge/report


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