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ファン客だけを見よ──リピーターが支える「指名買いEC」への転換術

  • 2月26日
  • 読了時間: 6分

「指名買いEC」とは何か──「誰でもいい客」を追わない覚悟

ECで売上を安定させるためには、「一度だけ買う新規客を追い続ける店」から、「少数のファンが繰り返し指名して買う店」への転換が不可欠です。

リピーターは新規顧客に比べて獲得コストが低く、購入頻度や購入単価も高くなる傾向があります。そのため、ECの長期的な利益の多くはリピーターによって支えられていると、各種調査や実務レポートでも繰り返し指摘されています。

ここでいう「指名買いEC」とは、モール内の価格比較や検索結果から偶然選ばれるのではなく、「ブランド名」「ショップ名」で検索され、直接訪問して購入される状態を指します。

この状態を作ることができれば、広告費や値引きに依存しない、持続可能なファンベース型ECへと移行することができます。



事例1:やずやに学ぶ「定期購入=関係性のデザイン」

健康食品通販の代表企業であるやずやは、日本の「単品リピート通販」モデルを確立した企業として知られています。

やずやの特徴は、定期購入を単なる販売手法ではなく、「顧客との長期的な関係性を築く仕組み」として設計している点です。

初回購入ではお試し商品を提供し、顧客が納得してから本商品へ進むツーステップの導線を採用しています。これにより、「売り込まれたから買う」のではなく、「納得して続ける」という体験を設計しています。

さらに、商品とともに同梱されるニュースレターやチラシでは、商品の背景にある農家のストーリーやスタッフの想いを継続的に発信しています。電話対応やDMも含め、「売るための接点」ではなく「関係性を深める接点」として活用しています。

このような取り組みによって、顧客は単なる購入者ではなく、「ブランドと長く付き合うファン」へと変化していきます。


指名買いECへの示唆

定期購入は「解約させない仕組み」ではなく、「続けたいと思える関係性を育てる仕組み」として設計することが重要です。商品だけでなく、ブランドの物語や価値観を継続的に共有することで、顧客との信頼関係が蓄積されていきます。



事例2:宝酒造オンラインショップ──メーカー直販ECのファン戦略

宝酒造の公式オンラインショップは、メーカー直販ECとしてファンとの関係構築に成功した事例です。

このECサイトでは、単に商品を販売するだけでなく、蔵元の歴史や製造背景、季節ごとの楽しみ方、料理とのペアリングなど、日本酒を楽しむライフスタイル全体を提案しています。

また、メールマガジンや会員向けコンテンツを通じて、商品情報にとどまらない読み物やストーリーを継続的に提供しています。

その結果、「安い酒を探す顧客」ではなく、「宝酒造の商品だから買いたい」と考える顧客が増え、価格競争に依存しないファンベースのECを実現しています。


指名買いECへの示唆

メーカー直販ECは、単なる販売チャネルではなく、「ブランドと顧客が直接つながる場」として設計することが重要です。



事例3:カインズ──コミュニティが生むファンベースEC

ホームセンターのカインズは、「カインズDIYスクエア」というオンラインコミュニティを運営し、DIYファンが作品やノウハウを共有できる場を提供しています。

ユーザーは自分の作品を投稿し、他のユーザーの投稿からアイデアを得ることができます。このコミュニティを通じて、DIYという体験そのものがブランドと結びつきます。

その結果、「どの店で買うか」ではなく、「カインズの商品で作りたい」という意識が生まれ、自然な指名買いへとつながっています。


指名買いECへの示唆

顧客がブランドと関わり、体験を共有できる場を提供することは、広告以上に強力なファン化施策となります。



事例4:ワークマン──ファンと共創するブランド

ワークマンは、アンバサダー制度を活用し、ユーザー自身が商品レビューやコーディネートを発信する仕組みを構築しました。

さらに、ユーザーのフィードバックを商品開発に反映することで、「顧客がブランドを共に作る」という感覚を生み出しています。

この取り組みにより、ワークマンは「安い作業服の店」から、「ワークマンの商品が好きだから買う」というブランドへと進化しました。


指名買いECへの示唆

ファンを単なる購入者ではなく、「ブランドの共創者」として扱うことで、強固なロイヤルティを形成することができます。



事例5:「F2転換」がファン化の分岐点

リピート通販の世界では、「F2転換率」(初回購入者の2回目購入率)が最重要指標の一つとされています。

初回購入者が2回目の購入に至るかどうかは、その後のLTV(顧客生涯価値)を大きく左右します。

そのため、多くの成功企業は、

・購入後のステップメール・同梱物によるフォロー・限定コンテンツの提供・顧客サポートの強化

などを通じて、2回目購入の体験を重視しています。



指名買いECへ移行するための5つの実務ポイント

1. KPIを「新規獲得」から「リピート率」へ転換する

売上を「新規客数」だけで評価するのではなく、

・F2転換率・リピート率・LTV

を中心指標として管理することが重要です。


2. ファン前提のコミュニケーション設計

既存顧客に対して、

・開発ストーリー・裏話・限定情報

など、「ファンだからこそ共有できる情報」を提供します。


3. 定期購入を「ファンクラブ化」する

定期購入者を単なる顧客ではなく、「会員」として扱い、特別な体験や情報を提供します。


4. ストーリーで選ばれるブランド設計

価格ではなく、

・価値観・理念・体験

によって選ばれるブランドを構築します。


5. 「誰を大切にするか」を明確にする

すべての顧客を追うのではなく、

・長く購入してくれる顧客・ブランドを応援してくれる顧客

を優先します。



まとめ:ファン客だけを見る覚悟が、指名買いECを作る

成功しているECに共通しているのは、「すべての顧客を追う」のではなく、「ファン客を中心に設計している」点です。

短期的な売上だけを追うと、新規広告や値引きに依存しがちです。しかし、リピート率やLTVを軸に経営を行うことで、「顧客との関係性」が最大の資産になります。

あなたのECでも、

・新規獲得数ではなく、リピート顧客数を確認する・クリック数ではなく、顧客との関係性の深さを見る・売上ではなく、ファンの増加を重視する

この視点を持つことができれば、「指名買いEC」への転換は現実的な目標になります。

ファン客だけを見る覚悟を持ったとき、ECは「売る場所」から、「選ばれるブランド」へと進化します。



参考文献


やずや(株式会社やずや)https://www.yazuya.co.jp/

宝酒造オンラインショップ(宝酒造株式会社)https://shop.takara.co.jp/

カインズ(株式会社カインズ)https://www.cainz.com/

カインズDIYスクエアhttps://diyc.cainz.com/

ワークマン(株式会社ワークマン)https://www.workman.co.jp/

Recustomer Magazinehttps://mag.recustomer.me/

D2C Lab(D2C広告研究所)https://d2clab.jp/

サブスクD2Cアカデミーhttps://subsc-d2c.com/academy/

マイナビD2C研究所https://d2c.mynavi.jp/

ebisumart(株式会社インターファクトリー)https://www.ebisumart.com/

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