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日本の伝統文化を世界に発信:BENTO&COのグローバル展開

1. BENTO&COの事業概要とグローバル展開

BENTO&CO(ベントーアンドコー)は、京都市を拠点に2008年11月に創業され、日本在住のフランス人、ベルトラン・トマ氏が代表を務める弁当箱専門EC企業である。

当初は「日本の良質な文化を世界に発信したい」という想いから始まり、現在では約100カ国以上への出荷実績を有し、グローバル越境ECの成功モデルとして注目されている。

主な事業内容

  • オンラインショップ運営:Shopifyを活用した多言語対応のECサイトで、世界中の個人・法人顧客に弁当箱を販売

  • 卸売事業:ヨーロッパを中心に25カ国・約150店舗への卸販売を実施

  • 実店舗運営:京都市中心部にて弁当箱専門店を運営

  • 物流ソリューション開発:「Ship&co(シップアンドコー)」という送り状発行・配送支援システムを自社開発し、2016年に提供開始

2. グローバル展開の戦略と成功要因

2-1. 文化の再解釈と商品開発

日本人にとって身近な「弁当箱」を、海外では新鮮なライフスタイルアイコンとして再解釈。曲げわっぱや和柄のデザインは特に人気である。

代表のトマ氏は「自分が気に入ったものだけを売る」という信条を貫きながら、海外の嗜好に合わせた独自の商品ラインアップを展開。また、ドラゴンボールやハローキティといった日本キャラクターとのコラボ商品も展開している。

2-2. SNS・メールマーケティングとコミュニティ形成

  • Facebookページで約8万いいねを獲得し、TwitterやInstagramでも積極的に発信。

  • メールマーケティングを重視し、定期的な新商品やセール案内によって売上拡大を実現。

  • 2009年から毎年開催されている「国際弁当コンテスト」は、優勝者に京都往復航空券を贈呈するなど、ファンとの絆を深めるグローバルコミュニティ形成に寄与。

2-3. 多言語・多通貨対応と物流最適化

日本語・英語・フランス語など複数言語に対応したECサイトを運営し、PayPalや各国のクレジットカードでの決済にも対応。国際配送の煩雑さを解消するため、自社開発の「Ship&co」を導入。他社EC事業者へのサービス提供も行っている。

3. 日本EC学会委員としての分析

3-1. 文化の翻訳と越境展開

BENTO&COの成功の鍵は、「日本文化の翻訳者」としての立ち位置にある。伝統文化を海外文脈で再編集し、ライフスタイルとして提案している点が差別化につながった。

3-2. 顧客接点とマーケティング

ユーザー参加型のコンテストやメール施策によって顧客ロイヤルティを高め、セール時には売上が平時の10倍になる事例もある。

3-3. 自社物流システムによる競争優位性

「Ship&co」によって、国際配送の自動化と効率化を実現。他のEC事業者からも高い評価を得ている。

4. 今後の展望と社会的意義

BENTO&COは、今後AIを活用した配送最適化や、「Ship&co」の欧州・アジア展開、さらには現地文化と融合した新たな弁当文化の創出にも取り組む方針である。

「世界のランチタイムに日本の弁当文化を」というビジョンのもと、日本文化の発信者であると同時に、新たなグローバルライフスタイルの創造者としての役割も担う。

5. まとめ

BENTO&COは、「弁当箱」という日常アイテムを軸に、日本の伝統と現代技術を融合させた越境ECモデルを築いている。文化の再解釈、グローバルなコミュニティ形成、物流テックの自社開発という3つの柱が、同社の競争力を支えている。日本の伝統を次世代に、そして世界に伝える優良ケーススタディとして高く評価されるべき企業である。

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