模擬「裁判」を 大驛 潤 研究室のゼミ生で体験してきました-2

2019/04/01

 

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 前回、「大驛 潤 東京理科大学研究室」では、研究の一環として、某大学法学部での研究室ゼミ生の模擬「裁判」の体験を報告しました。今回も前回同様、ゼミ生が参加した模擬裁判(3月15日)のレポートです。その意図としては、今後のデジタル社会における企業の現場で起こりうる「リスク」「トラブル」「対処方法」を擬似的に経験することで、より深く関連分野を学んでもらいたいという考えからです。

 

裁判概要

 

 今回の模擬「裁判」の事案は、実際の事案を使ったケースでした。販売手法(実店舗とEコマース)と販売商品(Eコマースで販売しやすい商品と販売しにくい商品)に関する事例です。
2013年、“大衆薬のEコマース販売を一律に禁じた”厚労省に対し、最高裁は「違法」で無効と判断しました。これにより、厚労省を訴えていたEコマース販売業ケンコーコムが勝利しました。事実上、大衆薬のEコマース販売は全面解禁とされたというものです。

 しかし2014年の「旧薬事法改正」によって、大衆薬のEコマース販売は前面禁止ではなくなり、一部規制となりました(一部対面販売必要)。

 これに対し、大衆薬のEコマース販売業の楽天ダイレクト(ケンコーコム改名)が国を訴えました。つまり、大衆薬の一部を指定しEコマースでの販売を禁じる薬事法の規制は“営業の自由を保障する憲法”に反するとして、国を相手に指定の取り消しなどを求めました。模擬裁判はこのケースを法律上、適切とするか否か、というものです。

 

議論の争点

 

 Eコマース事業業界では、大衆薬のEコマース販売を強化したい背景があります。このような中、2014年旧薬事法が改正されました。その中心は、処方箋が不要な大衆薬の一部を「要指導医薬品」と分類したことです。そして副作用のリスク等を背景に薬剤師の「対面販売」を、その医薬品に義務付けました。
 議論では、この規制の「妥当性」が争点となります。もし結果として、妥当性の否定に合理的な疑いがある場合は「非」となります。 

 

議論

 

 物流,情報流が不可分の既存流通は,Eコマースが進展することで、一種の「物・情報」の機能分離が進められました。重要なことは、大衆薬をどのように位置づけるのかということです。
 それは、大衆薬の商品としてのネット市場価値(効率=薬剤師コスト削減)と病気の癒治・軽減の社会的価値(安全=薬剤師からの専門知識)との分離をいざないました。もちろん薬の基本価値が消費者のべネフィットとリスクからなることには変わりはありません。もっとも,商品として大衆薬が流通される以上,そこに「市場価値」が作動するとはいえ、人体への危険防止は何事にも変えがたい価値です。Eコマース販売により、商品として大衆薬販売時に提供されるべき情報流(専門知識)が捨象されるとき,薬局販売とEコマース販売の対比が浮上してきます。今回の模擬「裁判」では、2手に分かれて議論されましたが、要指導医薬品の品目数(大衆薬全体の0.6%程度)の問題も含め、この点がもっとも白熱しました。

実際の結論

 

 実際の裁判での判決(2017年7月18日)は、「要指導医薬品の品目数が少ないことなども踏まえ、対面販売の必要性を再確認しました。そして憲法の職業活動の自由には違反しないと結論づけました。薬剤師の「対面販売」を義務づけ、規制の「妥当性」を「是」としました。

 判決理由は、「健康被害が生じる恐れのある大衆薬の規制は公共の福祉に合致する」ということです。「副作用のリスクに照らせば、薬剤師の判断のもとで販売させる規制には相応の合理性がある」と対面販売の必要性を指摘しています。(要指導医薬とは、医師の処方に基づく医療用医薬品[処方薬]から大衆薬に切り替わってから原則3年程度の医薬品です)。楽天ダイレクトは「判決は承服しがたい。規制の見直しに向けた働きかけを継続する」などとするコメントを出しました。

 

 日本企業の現場で起こりうる「実店舗販売」と「Eコマース販売」の問題を商品の性格の点から、擬似的に議論することで、より具体的に思考する必要があります。今回はデジタル社会に向けたディスカッションの第2回でした。

 

by 東京理科大学 教授 大驛 潤

 

 

大驛 潤(おおえき じゅん) 経歴

 

メリーランド大学卒業、東京大学大学院博士後期課程退学(単位取得)。バブソン大学大学院アントレプレナープログラム修了。東京大学助手、九州大学大学院特任准教授、スタンフォード大学大学院客員准教授を経て、現在、東京理科大学経営学部・大学院経営学研究科教授。経済学博士、税理士。(2019/03現在)

 

小学校5年生12月からサッカーをはじめ、高校1年生でセンターフォワードとして高校選手権全国大会出場。交通事故後、東京理科大学サッカー部監督を経て、現在、東京理科大学サッカー部部長。理科大監督・部長合わせて指導約10年。

 

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